● 講義終了後の雑談 〜家計を助けるお金の知恵〜 

第13話 贈与税がタダになる制度






ところで、皆さんは、「お金を貯める方法」、「お金を殖やす方法」と聞いて、どんな方法を思いつきますか?

ある方は、「生活費を切り詰めてお金を貯める方法」を思いつくかもしれません。

またある方は、「株取引でひとやま当ててお金を殖やす方法」を思いつくかもしれません。

もちろん、どちらの方法も誤りではありませんが、単純なやり方では、前者の方法は、「苦痛」を伴います。後者の方法は、「リスク」を伴います。

ファイナンシャルプランナー(FP)は、生活に密着したお金の専門家ですが、それでは、お金の専門家が提案する方法というのは、一体どんなものなのでしょう。

私は、お金の専門家の役割は、「苦痛」も「リスク」も限りなくゼロに近づけながら、「お金を貯める方法」、「お金を殖やす方法」を提案することだと思っています。(あくまで、個人的な見解ですが・・・)

例えば、FPが、株式投資をアドバイスをする場合なら、如何にして、リスクを回避しながら、有利な運用を実現できるか、を、お金の知恵を絞って、あれこれと考える訳です。

FPは、ライフプラン、金融、保険、不動産、タックスプラン、相続対策という6つのお金の知恵を駆使して、お金のプランを作ることができますが、なかでも、タックスプラン・相続対策は、十分にその内容を理解した上で実行すれば、「苦痛」も「リスク」も少ないお金の知恵と言えます。

今日は、タックスプラン・相続対策の中からお金の知恵をご紹介します。



生活に必要な3大要素といえば、衣食住ですが、特に都市部では、「住」を確保するために必要なお金は、相当なものになります。

今は、日銀の金融政策で、超低金利となっていますし、また、銀行間の競争も熾烈となっていますので、住宅ローンの金利水準も、それに伴って低いものとなっています。

手持ち資金の少ない20代〜30代の方でも、この超低金利のチャンスを利用して、なるべく早いうちに、住宅を確保しておきたいと考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、今の20代〜30代は、パート・アルバイト・派遣などの非正規雇用が激増していることに象徴されるように、収入面の不安が大きくなっています。

年代による収入格差は、今後も是正される気配はありませんので、現実的な対応としては、親から贈与を受けるということになります。

住宅取得資金の贈与は、550万円までは贈与税がかからないという話を、どこかで聞いたことがある方がいらっしゃると思いますが、今は、このあたりの制度が、がらっと変わっていますので、ご存知でなかった方は、この機会に確認しておいても良いでしょう。

ちなみに、550万円まで贈与税がかからないというのは、毎年ある贈与税の基礎控除額(110万円)の5年分を前倒しで利用できる特例のことですが、この特例は、平成17年末迄に贈与を受けた分までで廃止となる見込みです。

今は、それに代わって相続時精算課税という制度が登場しています。平成15年から登場したこの制度ですが、この制度を説明する前に、相続税の基礎控除額のお話しをしておきます。

相続税の基礎控除額は、実は、5000万円+1000万円×法定相続人の数もあります。(既にご存知の方も多いと思いますが・・・)

それに加え、相続税の計算上、被相続人の死亡により受け取る生命保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものを相続人が受け取る場合は、非課税限度額が500万円×法定相続人の数まであります。

また、その他にも複雑な財産評価の計算などがありますので、実際に、相続税を課税されるケースは相続全体の5%程度と言われています。

つまり、残り95%の相続は、相続税の心配は、いらないということです。

ちなみに、この相続時精算課税は、暦年課税(従来の方式)との選択制になっています。

相続時精算課税を選択すると、複数年にわたり利用できる贈与税の特別控除額を2500万円まで確保することができます。但し、一度相続時精算課税を選択すると暦年課税に戻ることはできません。

この雑談のタイトルは、注目を引くために、「贈与税がタダになる制度」としましたが、相続時精算課税の制度は、正確には、「複数年にわたる2500万円までの贈与につき贈与税がタダになる制度」です。

なお、この2500万円の特別控除額というのは、住宅取得のための贈与に限りません。

住宅取得のための贈与の場合は、2500万円の特別控除額の他に、さらに1000万円の住宅資金特別控除額がプラスされる特典があり、この特典は、平成19年末まで延長される見込みです。

但し、相続時精算課税を選択した場合、この2500万円までの贈与財産は、贈与税はタダになっても、相続発生時の相続税の計算上、贈与時の価額で相続財産に加算されることになります。

ですが、先程も申しましたように、95%の相続は相続税の心配はいらないのです。相続税の計算で、仮に2500万円の贈与財産を加算されても、ほとんどのケースは、相続税の課税はない訳です。

このように利用価値のある制度ですが、実際にこの制度を利用する場合は、適用対象者等の要件を細かくチェックしなければなりませんし、このスペースに、書ききれていない内容もあります。

また、今後の税制が大きく変わってしまった場合のリスクというものも少なからずあります。



上記は、どなたにも必要なお金の知恵ですが、このように少し説明しただけでも、一般の方にとって、かなり難解なものです。

FPは、必要に応じて税理士と連携を取りながら、タックスプラン・相続対策にも対応することができますので、住宅取得にあたり、この制度の利用を検討される方は、まずは、敷居の低いFP相談を利用するというのもひとつの方法かもしれません。




| 目次へ |



家計簿の選び方エクセル家計簿講座マネー管理の5点セット


TOP

Copyright(c)2006, 森本FP事務所 .All Rights Reserved.